ーフ・フロアー株式会社

らくらく面戸その2


「三人よれば」


キノコの生えるアパートにて

戦後すぐに建てられた古びたアパートの一室。六畳一間に事務机一つ。接客用の椅子はなく、わずかなスペースに座布団がおかれている。梅雨時期には、押し入れにキノコが生えた。これが、当社のスタート時の姿である。

夏の日の午後、蒸し暑い事務所に一人の男が訪ねてきた。私とは数回ほど面識のあるIさんだ。彼はかつて梱包資材の実用新案を取得し、その販売で一時は成功を収めた。しかし類似品の出現によって売り上げが激減し、やがて彼の会社は大きな借金と共に倒産した。その後、Iさんは知人の伝手でプラスチックのインジェクション成型の会社の営業として働いている。当社の棟面戸を制作している会社だ。

そこへ偶然、もう一人の訪問者が現われた。Dさんはプラスチックの押し出し成型の会社の社長だ。中小企業だが技術力が高いことで、有名だと聞いている。当社の一枚型の軒面戸を制作している会社である。

IさんとDさんは初対面であった。二人ともプラスチック成型の会社だが、分野が全く異なるので、競合関係にはない。

三人は当然のように、世間話から始めた。そして、お互いに「景気が悪い」とか、「政治がどうの」とか、通り一遍の話題がしばらく続いていた。


私は、何気なく話の流れのつもりで言った。「やはり何か画期的な新商品でも開発しないと、儲かるほどにはならないですね。」

「職人さんたちが、なにか困っている事とか、こうすればもっと楽に仕事ができる事とか、そんな視点を持てば、何か新製品のヒントがあるんじゃないの。」とIさん。

「そうですねー。自分で言うのもなんですが、当社の軒面戸って、施工するのにけっこう面倒なんですよ。一枚づつ、釘を二本打つでしょ。あれが何枚もつながっていて、いっぺんに施工できたら、楽だと思うんですけどね。」と、問題提起を私がした。

「それじゃ、面戸を熱処理かなんかでつなげて、ロール状にして売ったらいいんじゃないの?」アイデアマンのIさんはすぐに思いついた。

「いや、駄目なんですよ。面戸は瓦の地割に合わせて施工しないと駄目なんです。瓦を施工する寸法は、屋根の寸法によって、長くしたり短くしたりするので、一定ではないんです。

つまり、連続した形の面戸なら施工した後でも、その面戸を動かせなくては駄目なんです。」

と私。

「釘で止めた後に動くなんて、それは無理ですね。」とDさんは私を慰めるようにやさしく言った。


Iさんは思案にふけった雰囲気で、しばらく沈黙していた。しかし、急に笑顔になり、その眼には炎が燃えるようだった。「そうだ、カーテンレールの考えで、できるんじゃないか!」

「ああ、そうか。でも、カーテンレールみたいに一番下にあるんじゃなくて、鼻桟に打ち付けるところをレール部分にして、その上に三角の形の面戸をつなげれば良いんだ。」私は全身に炎が燃えるのを感じながら、かなり興奮して言った。「でも、これって、そんなに高くては売れないし、それに技術的に可能ですかね。価格を考えると、やっぱり押し出し成型でしょ。Dさん、どうですか?」

すると、Dさんは手帳にスケッチを描いた。物静かな彼だが、その体からは陽炎が立ち上るようだった。

「こんな感じでどうですか?」

らくらく面戸の原型ができた瞬間だ。六畳の事務所は熱かった。


問題提起をした私。基本的な概念を発想したIさん。そして技術面でそれを可能にしてくれたDさん。らくらく面戸は、この三人の偶然の出会いによって誕生したのでした。

ホームコラム「三人よれば

製品開発エピソード2

ⓒ 日本ルーフ・フロアー株式会社