ーフ・フロアー株式会社

新らくらく軒面戸 和形1号


「小鳥の飛翔から」


軒天井の穴に入る雀

数年前の春麗らかな日に、私は友人のデイビットの自宅に招かれた。彼とは趣味のスキューバダイビングで知り合った。仕事の関係は全くない。

彼の自宅はかなり大きい。玄関を入ると正面に階段があり、二階まで吹き抜けになっている。その吹き抜けを囲むように廊下がある。玄関だけでも4畳半はありそうだ。玄関の左手には12畳の和室、右手は洋室でざっと20畳はありそうだ。洋室の真ん中には暖炉がある。

昼食は庭でバーベキューをすることになり、庭に出た。庭もかなり広い。バトミントンコートよりも広い芝生と、塀に沿っては花壇に色とりどりの花が咲いている。芝生の北側には池もある。池の向こうはちょっとした森だ。これら全てが彼の自宅の庭である。

デイビットと彼の息子がバーベキューの準備をしている間、私は、池の中を泳いでいる鯉や、木々にやってくる小鳥を眺めていた。


ふと気がつくと、家の軒天井に小さな穴が開いており、小鳥が出入りしている。軒天井には有孔ボードが施工されているが、その一部が欠けてしまったのだろう。

彼に鳥たちの侵入を告げると、彼は笑って「午後にでも穴を塞ぐよ」と気楽に受け止めた。

私は気になったので、軒天井を出入りしている小鳥を眺めていた。

まず、気が付いたのは、その小鳥たちが雀であることだ。しばらく観察をしていると、興味深い事を発見した。雀たちにも穴に入る技量の差があり、大きく3種類の入り方があることだ。

1番目は上級者。まず穴に向かって普通に飛んでくるのだが、穴の真下まで来ると、まるで穴に吸い込まれるように、スッと真上に入って行く。

2番目は中級者だろうか。穴に入ろうとして飛んでくるが、少し目測を誤ったらしく、穴の下で羽ばたいてホバリングをしている。そして、目標を良く確認してから、真上に向かって一気に穴に入る。

3番目は努力家だ。中級者のようにホバリングをして入ろうとするが、上手くゆかない。そこで、背面飛行の姿勢になってから足を穴の縁にかける。そしてそのまま羽ばたいて体を起こすように動いてやっと穴の中に入るのだ。

なかなか雀といえども器用なものだと感心した。


さて、それから数か月後のこと。私は再びデイビットのお宅を訪問した。私は前回の雀の件が気になり尋ねてみると、とても興味深い話をしてくれた。


心優しい彼は、天井裏の巣を撤去したあと、雀たちのために鳥の巣用の小箱を庭の木々に取り付けたのだ。そしてバードウオッチングを楽しんでいると言う。そして、いろいろと小鳥たちの生態も分かってきたらしい。

彼によれば、雀の巣箱の入り口は3cm以上必要だ。1mmでも小さいと雀は入れない。その代わり、シジュウカラなど雀よりも小さな鳥たちが営巣するので、いろいろな鳥を見て楽しめる。入り口が5cmを超えると、今度は雀よりも大きなムクドリなどがやってくる。鳥の大きさはそのまま力関係になるので、やはり雀は営巣できない。

さらにデイビットは、あの日の軒天井の件を思い出し、一つの実験をしてみた。

巣箱の入り口を真下に向けてみたのだ。すると、入り口が3cm以下では、どんな鳥も営巣しなかった。そして5cm以上あっても、雀しか営巣しないのだ。つまり結論としては、巣箱の入り口が下を向いている場合、雀以外の鳥は入ることができないのだ。

どこにでもいる雀だが、この鳥には特殊な飛翔能力がある。それはホバリングである。

ホバリングとは、一般的には空中停止を意味するが、雀の場合は停止するだけではなく、体を縦にしたまま上下移動もできるため、巣箱の入り口が下を向いていても入ることができるのだ。

デイビットとの楽しい鳥談義と、酒盛りは夜遅くまで続いた。しかし、この時はまだ、彼の観察が新製品への道を開くとは、予想さえしていなかった…。

製品開発エピソード3

ホームコラム「小鳥の飛翔から」

らくらく面戸

開発エピソードその1


「私と雀」


青春時代の心の痛手

らくらく面戸

開発エピソードその2


「三人よれば」


キノコの生えるアパートにて

新らくらく面戸

開発エピソード


「小鳥の飛翔から」


軒天井の穴に入る雀


日本の屋根材は


「毛細管現象」との闘い

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